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総合情報システムを扱う日本電通建設の本社ビルの敷地は,大阪の環状線の弁天町駅と地下鉄中央線の交差点から少し大阪港寄りにある。周辺は再開発と都市整備の事業が進められてはいるがまだ雑然としており,あまりよい環境とはいえない。 私たちが日本電通建設の本社ビルをこの敷地に設計することの依頼を受けたのは1987年の秋であったので,完成までに7年の歳月がかかったことになる。 故人となられたこの会社の先代の社長が,より高く,大きな本社ビルを願っておられたことを思い出すが,紅余曲折の後,現社長のもとで今日のようなかたちで本社ビルは完成したのである。 この長い設計期間中にずっと実現したいと考えていたことがある。 それはこの本社ビルで仕事をする人びとが,互いにビジュアルに自分たち同士を認識できるような空間構成にしたいということであった。 こうした相互の認識というものは,今日のセンターコアのオフィスビルにおいても高度な情報システムを使うことで一応は可能であるが,私は「人間の五感を通じてじかに認識できる」ということを特に大切に考えてきた。 これまでにもオフィスビルの中心部分を抜いてボイドな空間をつくり,その周辺に執務室を配するというやり方でビジュアルに互いを

認識できるような空間をいくつか実現してきている。 例を挙げるならば,「ロンシャン本社」(本誌700の,「高岡建設本社ビル」(1975年竣工),「ロンシャン第2ビル」(7706),「長瀬産業本社ビル」(8303)などである。

外壁に開けられた横向きの吹き抜けを見る

この「日本電通建設本社ビル」もこのような一連の作品の流れをくむものである。 しかし,ここでの新しい試みは,外部の騒音が非常に高いため外周をほとんど壁で閉ざしているのに対して,3層の横向きの吹抜けがあることである。 このことは,エレべータを降りたときに,街に対する自分の位置とか建物の構成や全体像を即座に理解するのに十分に役立つと同時に,これによって建物の中で働いている人びとを一望のもとに認識することができる。 このことは人びとにある種の安心感を与えている。 建物の外部は,人びとに対して馴染みやすいブリックで威圧感を与えないような,しっとりとした表現にしている。 これも私の一連の作品の流れをくむものである。 内部の吹抜けに面する外壁はアルミのスパンドレルとし,反射率を上げて執務室に十分な光を与えることに役立っている。 この建物が,周辺の殺伐とした生硬い街並みに対して安らぎとしっとりとした表情を与えることに,少しでも役立つことができたのではないかと思っている。

(永田祐三)

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前頁:外部に対してほとんど閉ざされた壁面に3層分の横向きの吹き抜けがある。
前頁:外部に対してほとんど閉ざされた壁面に3層分の横向きの吹き抜けがある。
次頁:北西側の通りに面したファサード。
外壁は外に対してほとんど閉ざされている。
外壁は外に対してほとんど閉ざされている。
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